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リウマチ・膠原病

全身性強皮症

​全身性強皮症は,皮膚や内臓,血管の線維化(コラーゲン主体の結合組織の増加)と,血管の収縮および狭窄による血流低下を特徴とする自己免疫疾患です。

Q:発症しやすい年齢は?女性が多いの?

 回答 

30-50代女性が最も多く,男:女=1:9と女性に多いです。

全国で約3万人と推計されています。

Q:原因はあるの?

 回答 

コラーゲン代謝の異常,細胞成長因子やサイトカインの異常,遺伝的背景,環境因子による免疫系の異常など,様々な因子が関与していると考えられています。

Q:診断はどうやってするの?

 回答 

最も広く使用されているのは、1980年にアメリカリウマチ協会が作成した分類予備基準、2003年に厚生労働省が作成した新しい診断基準です。

大基準・・・

近位皮膚硬化(指先あるいは足趾より近位に及ぶ皮膚硬化)

小基準・・・

①手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化

②手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは手指の萎縮

③両側性の肺基底部の線維症

大基準あるいは小基準2項目以上を満たせば全身性強皮症と診断

大基準・・・

手指あるいは足趾を超える皮膚硬化

小基準・・・

①手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化

②手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは手指の萎縮

③両側性肺基底部の線維症

④抗Scl-70抗体または抗セントロメア抗体陽性

大基準、あるいは小基準①および②~④の1項目以上を満たせば全身性強皮症と診断

Q:どんな症状がでるの?治療法は?

 回答 

◉皮膚硬化

手指がソーセージのように腫脹し,その後皮膚が突っぱったように硬くなります。手指だけでなく手背〜上肢や下肢,体幹,顔などにも皮膚硬化を認めるタイプ(びまん皮膚硬化型)は,発症後4-5年以内に症状が速く進行し,内臓の合併症を認めることが多いです。手指のみのタイプ(限局皮膚硬化型)は,ゆっくりと進行することが多く,内臓の合併症を認めることは少ないとされています。(ただし,肺高血圧については後者でも注意が必要です。)手指の皮膚が硬くなるため,関節が曲げにくくなり,握り拳を作ったりつまんだり持することが難しくなります。顔の皮膚が硬くなれば,表情が作りにくくなったり口が開けにくくなったりします。

→標準的な治療は確立されていませんが,4-5年をピークに進行は緩やかになり,その後長期的には自然と軟化することが多いです。

 

◉レイノー現象,血流障害

四肢末梢の血管の攣縮(れんしゅく)=収縮がおこり,血流が障害されて皮膚が白〜紫〜赤色に変化します。ほぼ全例にレイノー現象を認めます。爪上皮(あま皮)に延長や点状出血を認めます。血流障害が悪化すると,それを改善しようとして毛細血管が拡張します。顔や体幹にクモ状血管腫を認めます。さらには,指先に潰瘍や陥凹瘢痕ができることもあります。

寒冷刺激が最も原因として多いですが,冬だけではなく,夏でも冷房や冷蔵庫の冷気で引き起こされます。ストレスや喫煙も原因となります。

→まずは寒冷刺激やストレスを避けること,禁煙することが大切です。内服治療では,末梢血管拡張薬や抗血小板剤が適応になります。

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爪上皮出血点.jpeg
手足の冷え.jpg
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◉肺高血圧

限局皮膚硬化型の約10%に肺高血圧を認めるとのデータがあります。肺動脈の線維化による肥厚,血管抵抗上昇が原因で,肺の血圧が上がります。労作時(体を動かした時)息切れや低酸素血症を認めるようになると,在宅酸素療法が必要になり,突然死の原因となります。

→心エコー検査や心カテーテル検査で肺動脈圧を測定します。酸素投与,利尿薬を基本として,血管拡張薬や抗血小板薬,抗凝固薬などを併用します。早期発見が大切で,進行し始めると治療が効果を示しにくいとのデータがあります。

 

◉間質性肺炎

強皮症の間質性肺炎はその多くが慢性の経過をたどり,治療の適応はありません。悪化する場合は,ステロイドや免疫抑制剤による治療を行います。

 

◉胃腸症状

胸焼けや胸のつかえといった逆流性食道炎や便秘の症状が,5-9割の方に生じるとの報告があります。食道だけではなく,胃から大腸まで蠕動運動が低下します。食道平滑筋層の線維化,食道下部や胃の蠕動運動低下によって,胃酸の逆流や便秘がおこりやすくなります。

→逆流性食道炎には胃酸分泌を抑えるPPI(プロトンポンプインヒビター)が,胃や腸の蠕動低下には蠕動運動促進薬が,適応になります。

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