岐阜県各務原市鵜沼三ツ池町のおくだ内科 一般内科、消化器内科、循環器内科、リウマチ診療の他、健診やドック、訪問診療も行っています
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リウマチ・膠原病
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデスは、若い女性に発症する自己免疫疾患です。
英語でsystemic lupus erythematosusといい,頭文字をとってSLEと呼ばれます。lupus というのはラテン語で「狼」という意味で、皮膚に出現する紅斑がまるで狼に噛まれたようであることが由来とされています。
顔に現れる紅斑が特徴的で,蝶々のような形であることから日本語では「蝶形紅斑」と呼ばれます。皮膚だけではなく全身に炎症が生じ、腎臓や心臓、肺、脳など様々な臓器に障害を引き起こします。
Q:発症しやすい年齢は?女性が多いの?
回答
20〜40歳代の女性が多いです。約9割が女性です。
国内の患者は6万〜10万人程度とされています。
Q:どんな症状がでるの?
回答
全身にいろんな症状がでますが,個人差も大きいです。発熱、倦怠感、食欲不振、易疲労感に加えて、下記のような臓器症状が出ます。
口内炎は痛みがなく,自分で気づかないことが多いです。脱毛することもめずらしくありません。
間質性肺炎は,空咳が特徴です。
ループス腎炎は軽度の蛋白尿・血尿から透析を要する腎障害までさまざまです。
蝶形紅斑は,文字通り蝶の形をした顔の皮疹です。紅斑が両ほほだけではなく,鼻をまたぐように繋がるのが特徴です。ディスコイド皮疹は円板状の皮疹で,顔だけでなく体に出ることもあります。紫外線の刺激によって,紅斑や水膨れが出ることも多いです(日光過敏症)。
関節炎は,痛いけれども関節リウマチのように関節破壊が進むことは通常ありません。
レイノー症状はストレスや寒冷刺激で現れます。
心膜炎・胸膜炎は発熱や胸の痛みがあります。
Q:遺伝が原因?
回答
遺伝の要因もありますが、後天的な影響もあります。
遺伝子が同じ一卵性双生児の場合、両者ともSLEになるのは2〜4組に1組程度と言われています。つまり,全く同じ遺伝子を持っていても,SLEになる場合とならない場合があるということです。そこには,何かしらの後天的な「スイッチ」が必要で,感染症,紫外線,性ホルモン,ストレス,薬物などの環境因子が加わり発症すると考えられています。遺伝だけで決まるわけではありませんが、家族に膠原病の方がいると有病率は上がります。
Q:診断はどうやってするの?
回答
下記のような分類基準があります。あくまでも分類基準なので、診断には専門医の問診、診察、検査が大切です。
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ACR1982年の基準(1997年改訂)(Arthritis Rheum 1982;25:1271)
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顔面紅斑
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円板状皮疹
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日光過敏
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口腔潰瘍(無痛せいで口腔あるいは鼻咽腔に出現)
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関節炎(2領域以上の末梢関節で非破壊性)
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漿膜炎(胸膜炎あるいは心外膜炎)
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腎障害(0.5g/日以上の持続的尿蛋白か細胞性円柱の出現)
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神経学的病変(痙攣あるいは精神症状)
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血液学的異常(溶血性貧血、4000/μl以下の白血球減少、1500/μl以下のリンパ球減少、10万/μl以下の血小板減少のいずれか)
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免疫学的異常(抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、梅毒反応偽陽性)のいずれかが陽性)
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抗核抗体陽性
上記11項目のうち4項目以上を満たす場合、全身性エリテマトーデスと分類する
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SLICC 2012年の分類基準(Arthritis Rheum 2012, 64:2677)
臨床項目
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急性皮膚ループス 頬部紅斑、中毒性表皮壊死、斑点状丘疹、光線過敏のいずれか
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慢性皮膚ループス 古典的円板状ループス、増殖性(疣贅性)ループス、深在性ループス、粘膜ループス、腫瘍性紅斑性ループス、凍瘡様ループス、円板状ループス/扁平苔癬重複のいずれか
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口内潰瘍または鼻咽腔潰瘍
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非瘢痕性の脱毛
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2か所以上の関節炎
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胸膜炎または心外膜炎
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尿蛋白0.5g/日以上または赤血球円柱
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神経学的異常 痙攣、精神症状、複合性単神経炎、脊髄炎、末梢神経または脳神経障害、急性錯乱のいずれか
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溶血性貧血
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白血球<4000/μl、リンパ球<1000/μlのいずれか
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血小板<10万/μl
免疫項目
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抗核抗体陽性
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抗ds-DNA抗体陽性
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抗Sm抗体陽性
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抗リン脂質抗体陽性 ループスアンチコアグラント、梅毒反応、抗カルジオリピン抗体、抗β2GPⅠ抗体のいずれか
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補体低値
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直接Coombsテスト陽性
臨床項目と免疫項目それぞれ1項目以上を満たし、全項目のうち4項目以上陽性であれば SLEと診断する。
Q:治療はどうするの?
回答
副腎皮質ステロイドが治療の中心です。病気の勢いが強い場合は,ステロイドを点滴で多量に投与します(ステロイドパルス療法)。副腎皮質ステロイド内服を開始し,病状が安定すれば減量を行っていきますが,減量が困難な場合や副腎皮質ステロイドの副作用が強い場合などは,早めに免疫抑制剤の併用を行います。
免疫抑制剤には、アザチオプリン(イムラン®︎),シクロフォスファミド(エンドキサン®︎),タクロリムス(プログラフ®︎),サイクロスポリンA(ネオーラル®︎),ミゾリビン(ブレディニン®︎),ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®︎)などがあります。また、2015年にはヒドロキシクロロキン(プラケニル®︎)が本邦でも承認されました。ヒドロキシクロロキンは,1945年以来、世界70ヵ国以上の国で承認されている標準的治療薬です。しかし,日本では抗マラリア薬として使用されたクロロキンによる薬害訴訟の過去があったため,承認が遅れました。ヒドロキシクロロキンはクロロキンの類似した構造および作用を持っていますが,クロロキンに比べて網膜障害を発症する確率は非常に低いことが分かっています。これらステロイドや免疫抑制剤を投与しても改善を認めない場合,ベリムマブ(ベンリスタ®︎)という生物学的製剤による治療も新たに出てきました。近い将来,リツキシマブ(リツキサン®︎)という別の生物学的製剤がSLE治療適応承認を受けることが期待されています。
Q:日常生活での注意点は?
回答
日光や寒冷,睡眠不足,ストレス,風邪などの感染症を避けることが大事になります。